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第18話 淮南寺

last update Date de publication: 2026-07-02 13:34:55
気の合う夫婦とこちら二人。四人揃って、淮南寺に出かけることにした。

商売をしている夫婦の都合もある。

それを訊き、お店の休みの日を淮南寺行きの日にした。

当日、朝から晴れていた。

鐘楼の下で待ち合わせ、みんなは楽しい話に盛り上がりながら、一路淮南寺を目指した。

「淮南寺ってね。五道将軍で有名な寺院なのよ。知ってた?」

「知らなかったわ。五道将軍? それは、何?」

「道の辻や、現世と来世の境界を守る神よ。悪い鬼が入るのを妨げて、旅人の安全を守るとも言われているわ」

商人の妻が教えてくれた。

「もしかして、日本でいうところの道祖神どうそじんかもね」

あやふやな知識しかない私は、決して口には出さなかった。せっかくいい話の腰を折りたくない。心の中だけで思った。

「五道将軍とは違うが、私たちの店の向かいの店は、五味将軍という名の食堂だよ」

「そうなんですか」

ここぞとばかりにチョーが合いの手を入れる。彼も話に加わりたいのだろう。

「五味って……。甘い、辛い、しょっぱい、苦い、とえーと、酸っぱいかしら」

「そうよ。バイちゃん、正解」

自己紹介して以来、私はこの商人の夫婦にずっとバイ(梅)ちゃ
天衣 琴音

飯店/中国の食堂

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  • アジアンロマンス ~私を平気で裏切ったあなたには、最高の罰で償ってもらいますから~   第49話 皇帝の嘆き

    三人の皇子は生まれながらにして、皇帝の世継ぎ争いという看板を背負わされた。竜光皇子、獅雷皇子、双渦皇子。郭貴妃がいて、私がいて、皇帝の妹がいる。だれも譲らなかった。三人の母親は、懸命に我が子──郭貴妃の場合は従妹の子だと噂されたが──を王宮内でアピールする日々が続いた。皇帝はまだ若い。現実的に皇帝の位を禅譲するのは何十年も先の話だ。ただ病没や戦死の可能性がある以上、万一の事態に備えて次を決めるには、早いに越したことはない。三皇子の乱立で、その判断が難しくなった。世継ぎ問題は混迷を極めた。はたして、皇帝は三人の子を我が子だと思っただろうか。それを確かめる機会もなくはなかったが、面と向かって訊きづらかった。三皇子が皇帝の本当の子どもなのか。それは重要であるにもかかわらず、真偽の事実さえ確たる証拠もなく、判断のしようがなかった。各人の思惑が絡み、王宮は揺れた。皇帝はその状況に対して、昼夜を問わず悩まれた。深く嘆いていた。皇帝を世話する召使たちの口から何度も聞いた。「どうしたものかなぁ。朕の世継ぎだなどと、三人の女たちがかまびすしく主張して」皇帝はお付きの召使にそんな風にこぼした。私は違う召使からその話を人づてに耳に入れた。皇帝の悩める姿を慮ると、たいそう哀れで心が痛んだ。皇帝は自室に私を呼んだ。私は床に伏せた。「梅妃よ。おまえも三皇子問題の渦中の人物じゃな。朕は深く憂慮しておる。三人の皇子がすくすくと成長して大人になったとき、互いをどう思うのか」「さようにございますね。私は自身の皇子がすんなりと皇帝の座に就くとは思っておりませぬ。親の贔屓目であっても、やはり三人、いや白虎王子も含めた四人の中で、いちばん思慮深く、賢明で、文武に秀でた人物。国を治めるのにふさわしい器の持ち主が、次の皇帝として選ばれるべきだ。そんな風に思います」「そうじゃな。朕もそのように思う。そうなるのが筋で、もっとも王宮内で支持され、国民も納得するはずじゃ。しかし、物事は得てして理想通りに行かない。今の乱立状態がすぐに解消される見込みはないし、王宮内の過熱ぶりに朕はうんざりしておる」「お気持ち、お察しします。もう少しの辛抱です。いつ収束するのか、私にもわかりませぬが、皇帝は皇帝らしくあられませ。それがいちばんでございます。常に気高く、主君としての

  • アジアンロマンス ~私を平気で裏切ったあなたには、最高の罰で償ってもらいますから~   第48話 三つ巴

    郭貴妃の竜光皇子に、私の獅雷皇子。王宮は白虎王子をさしおいて、二番目と三番目の皇子のどちらが世継ぎ競争を勝ち抜くかに注目が集まった。互いに皇帝の子ではないのに、それだからこそよけいに熱を入れた。それぞれの男児を次の皇帝にし、ゆくゆくは最高の絶対権力を手に入れ、王宮をほしいままに支配したい。執念と野望。それに燃える私たちは、周囲も巻き込んで激しく火花を散らした。廊下で鉢合わせれば、当然のようにケンカを売った。「ちょっと。向こうへ行くのよ。邪魔だわ。どきなさいって」私は郭貴妃に噛みついた。「何よ。そちらこそ、どいたらどう? 私には大切な用事があるのよ」「どかないわよ。どくもんですか。そっちが先に下がるか、わきによけなさいよ。どちらの位が上だと思ってるの? 第二夫人に命令するな」「はあ? この際、身分の上下なんて意味をなさないのよ。そもそも、竜光皇子が先に生まれたのよ。先に生まれたグループに優先権があるわ。早くどいて。蹴り飛ばすわよ」郭貴妃も口では負けてない。両者は前に進み出た。顔を近づけ、ガンを飛ばした。あなたが召使の元愛人で、クーデターを成功させるために色仕掛けで皇帝を唆そうとした悪女よ。その黒歴史は塗りつぶせないわ。心の中で彼女をなじった。二人が睨み合ってると、二人の皇子が泣き出した。若い女官の腕に抱かれた獅雷皇子は、廊下中に響くくらいの大声で泣きわめいた。一方、別の女官があやしていた竜光皇子も獅雷皇子に負けないくらいの鳴き声を上げ、周囲をうろたえさせた。「見なさいよ。あなたが意地悪するから、うちの皇子が泣いてるじゃないの。責任とりなさい」郭貴妃の顔をビシッと指さした。「私、意地悪をした覚えはないわ。なによ、責任って? 笑わせるわ。そちらが無茶を言うから、竜光皇子が泣き止まないのよ」そこへ皇后が通りかかった。郭貴妃の周囲の人たちは通路をあけ、私たちも廊下を皇后に譲った。皇后は私のところを通り過ぎたあと、こちらを振り返って諭した。「無駄な勢力争いで王宮を騒がせないでちょうだい。賢明な皇帝陛下がしかるべき時期に次の皇帝をお決めになる。私はそんな風に思ってます。赤ん坊を泣かせてまで意地を張り合う親は母親失格ですよ。もっと子どもを慈しみ、深い愛情を注ぎなさい」皇后にしては珍しく感情を表に出し、二人を𠮟

  • アジアンロマンス ~私を平気で裏切ったあなたには、最高の罰で償ってもらいますから~   第7話 罠

    「皇帝陛下、皇帝陛下。いずこに?」私は廊下を歩き、皇帝を捜していた。「皇帝陛下。梅皇貴妃が隼の餌を持ってきましたよ」しーんとしている。廊下をすたすたと歩く音と私の呼び声。それだけが響く。中国の王宮は静寂を好むのか。騒がしさとは無縁のようだ。「だれかおらぬか? 皇貴妃じゃ。梅妃が皇帝を捜しておる」中国の王宮で暮らす私の身分は皇貴妃。現世の主婦から貴族へと華麗に転身、異世界転移して第二夫人の体になった。姿は現生の私とほぼ変わらない。現世に夫を残して未練はないが、皇帝の愛がほしい。夫似の召使にそそのかされた。皇帝の寵愛を得たいなら、皇帝が愛玩する隼の喜ぶニワトリを園庭に放ちな

  • アジアンロマンス ~私を平気で裏切ったあなたには、最高の罰で償ってもらいますから~   第3話 生き物として

    昔の中国風王宮に来た私。タイムワープってやつなのか。難しい理屈に頭を使う気はない。そんな高級な頭脳すら持ち合わせてない。優雅な音色の笛と弦楽器。ゆるやかに、部屋に吹き渡る風。とても優雅な世界で、いつまでもこの屋敷にいたい、住みたいと願った。天蓋ベッドの部屋から出た。薄くて緑の絹の着物を着る私は、食堂を探した。板張りの廊下を歩く。まっすぐ進み、角を曲がり、またまっすぐ行く。突き当たりに左右の廊下があり、右に行く。あちこちに部屋があり、どこを曲がったのか、よく分からない。それにしても、お腹が空いた。お腹が空いたのに、だれも呼びに来ない。まさか、寝室で食事のわけもないだろう

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    鳥が額にぶつかって、気を失った私──まったく、そんな偶然が起きるものなのか?いたって平凡で、それまでは変わったことなど何も起きなかった私。正月に縁起がいいモノと言えば、一富士、二鷹、三なすび。あの鳥は鷹。そうではなく、もっと小さかった。小さいけれど、鋭い加速だった。私を獲物と勘違いしたみたいに、まっしぐらに飛んできた。うん。ぶつかる前のことをちゃんと覚えている。私は、何もかもを失ったわけではない。記憶がしっかりしてる。ちゃんと命もある。体も五体満足で、手足も動くし、顔も首も、上下、左右に動く。恐る恐る、手を額に持って行く。ちゃんと、額はあった。ちゃんとあるし、穴

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